就活生や社会人なら、ロジカルシンキングという言葉を聞いたことがあるはずです。実際に、社会人として働くとロジカルシンキングは適切なコミュニケーションをとるために大切なスキルであることが分かります。
しかし、ロジカルシンキングという単語だけでは、イメージがつかない人は少なくありません。ただ、「重要なスキルであることは知っているけどピンとこない」や「頭がいい人が実践しているスキル」といった印象に留まっている人も多いでしょう。
この記事では、東大院卒で海外プロジェクトのリーダーを経験してきた私がロジカルシンキングについて詳しく解説をしていきます。
目次
ロジカルシンキング(論理的思考)とは? 意味を含めて解説
ロジカルシンキング(論理的思考)と聞くと、「世の中、論理で話さなくても通じるのだから、論理にこだわらなくてもいいのではないか?」と疑問をもつ人は少なくありません。確かに、これは一理あります。
なぜなら、いつも理屈で相手を納得させてばかりいるわけではないからです。
例えば、「あうんの呼吸」だったり「相手の気持ちを慮る(おもんばかる)」といったように論理的に伝えなくてもいい場面は実際にあります。
しかし、実際は論理が力を発揮する場面も少なくありません。むしろ、会社で働いていると「あうんの呼吸」でやれることはほとんどありません。逆に論理的に伝えないと、協力をもらえなかったり自分の意見を伝えることができなかったりします。
そのため、ロジカルシンキング(論理的思考)について理解しておくことは大切なのです。それでは最初に「ロジカルシンキングとは何か」についてお伝えしていきます。
そもそもロジカルシンキングとは
ロジカルシンキングとは英語で書くと、Logical thinking(論理的な考え方)です。相手の言いたいことを理解し、相手に意見や提案を理解してもらい協力を得るための手段です。早い話、自分の意見を分かりやすく伝える方法です。
ただ、ロジカルシンキングには分野に応じて様々な使われ方があります。
論理学での論理力
論理学で使われる「論理」とは、いいアイデアを出したり面白い解決策を考えるためのスキルではありません。
では何かというと、分かるやすく説明する能力です。例えば、数学が得意な人は論理的だと感じている人は少なくありません。
しかし、答えを考えるプロセスは突拍子のないアイデアを閃く人であることは少なくありません。私は東大理III類の人と一緒に仕事をしたことがありますが、話は論理的でしたが普段は遊び心溢れる人でした。
このように、論理学では使われる論理力とは、説明する力でありそれ以上のものではありません。
GMATでのクリティカルリーズニング
GMATとは、ビジネススクール(経営大学院)に進学したい人が受験する適性テストです。授業についていける能力があるかどうかを測るテストです。GMATのセクションの一つであるCritical Reasoningは論理的思考を計測する試験です。
GMATには以下のセクションと問題があります。
No | セクション | 問題の種類 |
1 | AWA(Analytical Writing Assessment) | エッセイをパソコンを使って入力 |
2 | Integrated Reasoning | Table Analysis:表から情報を読み取り、選択肢の内容が正しいかどうかを判断する |
Graphics Interpretation:グラフから読み取れる情報を選択する | ||
Multi-Source Reasoning:文章や図表から読み取れる情報として適切なものを選択する | ||
Two-Part Analysis:与えられた情報に基づき、2つの要素について正しい内容を選ぶ | ||
3 | Math | Problem Solving:代数学や幾何学などの基本的な数学の知識を使い、問題に解答する |
Data Sufficiency:与えられた2つの情報が2つとも必要か、もしくは片方だけ必要か等を判断する | ||
4 | Verbal | Sentence Correction:下線が引いてある文章に当てはまる最も適切な表現を5つの選択肢から選ぶ |
Reading Comprehension:ビジネス・科学・社会に関する文章を読み設問に答える | ||
Critical Reasoning:論理力が試される問題です。短い文章を読んで、筆者の意見を補強したり、結論を批判したりする |
Critical Reasoningでは、以下のような問題が出題されます。
この主張を最も弱める根拠となる事実を次のうちから選べ。
1:事故にあった人を治療できない医療に課題がある。
2:監視カメラには、事故発生を物理的に防ぐことはできない。
3:交通事故死者数が増加していることで、自動車修理メーカーの業績は好調だ。
4:交通事故死者数の増加は世界で共通である。
答え 1
このように資格試験で要求される「リーズニング」とつく問題は、論理的思考を試す問題が多いです。外資系コンサルティング会社では、クリティカルリーズニングが筆記試験の問題として出題されることもあるようです。
コンサルティング企業が広めたロジカルシンキング
就活生や社会人がロジカルシンキングと聞いたときに最初にイメージするのは、このコンサルティング企業のノウハウをベースにしたロジカルシンキングです。
マッキンゼーアンドカンパニーの出身者によって紹介されたコンサルティング企業で使われるコンサルノウハウで以下のようなノウハウは広く知られている
・MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)
・So What / Why So
・ピラミッドストラクチャwikipediaを参考し一部改編した
このようにロジカルシンキングにも様々な使われ方があります。就職活動中の学生や社会人であれば、コンサルティング企業が広めたロジカルシンキングがもっとも身近なはずです。
そのため、「ロジカルシンキング=コンサルティング企業の人の考え方」といったイメージをもつかもしれません。
しかし、実際にはロジカルシンキングとは相手にわかりやすく説明する考え方であって、それ以上のものではありません。
要するに、「適切に理解し、わかりやすく伝える方法」です。論理学もコンサルティングが広めたロジカルシンキングも、そこに集約しています。難しく考えないようにするといいでしょう。
ロジカルシンキングとクリティカルシンキングの違い
ロジカルシンキングを聞いたことがある人なら、「クリティカルシンキング」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
しかし、ビジネススキルとしての「ロジカルシンキング」を意味する場合、クリティカルシンキングとの差はありません。
ただ、グロービス社ではロジカルシンキングではなく、敢えてクリティカルシンキングと定義しています。それは以下の理由からです。
ロジカルシンキングと聞くと、論理的に考えれば、答えは一つに絞られるに違いないという思い込みを受けてしまいがちです。しかし、実際は、答えは、1つではなく、時と場合によって変化するものです。答えを客観的に、批判的に捉えるためにクリティカルシンキングという名前が使われてます。
「クリティカルシンキング」グロービス社から引用し、一部改編。
言葉の違いはありますが、ロジカルシンキングもクリティカルシンキングも「適切に物事を理解し、わかりやすく伝える方法」だと理解しておけば問題はありません。
ロジカルシンキングの目的や必要性とは
会社に入ると、ロジカルシンキングの重要性に気づきます。例えば、上司やチームとの議論の中で、「説明がわかりづらい」と言われることがあります。これは、ロジカルシンキング(論理的思考)の力が足りていないことが要因の一つです。
そのため、企業側も社員のロジカルシンキング向上のために施策を打っていることもあります。実際、私が以前勤務していた企業でもグロービスと提携してロジカルシンキングについて学べる環境を用意していました。
それでは、企業側が社員にロジカルシンキング向上を求める理由は何なのでしょうか。ここでは、ロジカルシンキングの目的や必要性について述べていきます。
ロジカルシンキングを学ぶことで得られるメリット
ロジカルシンキングを学ぶメリットは、分かりやすく話すことができるようになることです。なぜなら、ロジカルシンキング(論理的思考)とは話を整理整頓する力だからです。
例えば、「会社に無断欠席するのはダメだ」と主張したとします。これは当たり前の意見に見えます。しかし、無断欠席によって減給されたり評価が落ちたりするのであれば、本人に不利益が生じるだけです。そのため、無断欠席する本人の評価が下がることを受け入れれば、無断欠勤がダメとはいえないはずです。
しかし、「会社に無断欠席するのはダメだ」というのは、以下のように論理的に説明することが可能です。
・上司のBさんがAさんの急ぎの仕事を他の誰かに依頼する必要がある
・Aさんが来るかどうか分からないと判断がつかない
・会社に無断欠席するのは(上司Bさんの判断が遅れるから)ダメだ
また、以下のように考えることもできます。
・Aさんが無断欠席する
・上司のBさんを含め、チーム皆が心配する
・心配になって仕事に集中できない
・会社に無断欠席するのは(チーム皆が心配して仕事に集中できないから)ダメだ
という流れです。
つまり、ロジカルシンキングを学べば、「会社に無断欠席するのはダメだ」というような当たり前に思えることも納得のいくように説明できるのです。
このような分かりやすい説明力やコミュニケーション力こそ多くの企業がロジカルシンキングの力を重視している理由です。
なお、ロジカルシンキングを学ぶ中で以下の能力も自然と身に付いていきます。
・説得力がある
・仕事の段取りが上手い
・データの解釈が正しい
・話がわかりやすい
ロジカルシンキングができない人はどのような問題が起こるのか?
逆にロジカルシンキングができないと何か課題が発生するのでしょうか。それはムダな行動が増えることです。
なぜなら、ロジカルシンキングができない人はこれまでのやり方を軸に考えしまい、経験や思いつきの判断してしまうからです。
例えば、恋人を作りたい人がいるとします。もし、この人がラインやSNSを利用せずにメールだけを利用していたらどうでしょうか。
おそらく、恋人を作れるようになるまで時間がかかってしまいます。なぜなら、恋人候補になる人と仲を深めていくには、コミュニケーションをとるには相手がよく使っている方法を使う必要があるからです。
自分は「メールが得意だからメールしか使わない」といったポリシーを持っていると、恋人を作るというゴールまでに多くの時間がかかってしまうのです。
このように現代は情報が増え、変化の激しい時代に突入しています。そのため、必要な情報を選別しないといけません。実際、したがって、必要な情報を選び取れるようにならないと、判断を間違える危険が高まります。
そのため、客観的な判断ができないとムダな行動が増えてしまうのです。
また、無駄な行動が増えてしまう以外に以下のデメリットもあります。
・データの活用が下手
・非計画的
・人の話をうのみにしてしまう
・仕事の段取りができない
ロジカルシンキング(論理的思考)ができる人の12の特徴
ロジカルシンキングを習得したいと思っている人は少なくありません。しかし、「何ができればロジカルなのか?」を理解しておかないと、ロジカルシンキングを習得しようがありません。
例えば、「運動神経がよくなりたい」と考えたとします。しかし、そもそも運動神経がいいという言葉が抽象的なため、運動神経アップのために何をどのように改善していけばいいのか分かりません。
これはロジカルシンキングについても同じです。ロジカルシンキングの重要性を理解しても、そもそもロジカルシンキングについて理解できていなければ、何をどのように始めればいいのか分かりません。
そこで、ロジカルシンキングの力が高い人の特徴について紹介します。
以下は、アメリカの教育哲学者エニス氏による報告の中で紹介されているクリティカル(批判的)に物事を考えることができる人の特徴です。
・結論と課題を分けて、頭の中を整理できる
・全体を俯瞰(ふかん)してものごとを判断できる
・根拠をさがしつづけ、明確にできる
・十分に情報を得ようとしている
・他の選択肢を探す
・置かれている状況の中で、できる限り正確にこなす
・反省できる
・偏見でものごとを見ない
・証拠と理由がたりないときは、ジャッジを保留する
・証拠と理由がそろったら、行動する
・周囲の人の意見も取り入れる
出典:Ennis,1991, Critical Thinking: A Streamlined Conception, in Teaching Philosohpy 14:1, March
なお、私のほうで訳をわかりやすくしていますので、もし興味がある方は、原文を読んでみてください。
ここでは12の特徴があります。多いと感じるかもしれませんが、12個すべてを持ち合わせる必要はありません。実際は、他者と協力しながらより精度の高いアイデアを出したりプロジェクトを進めていったりすれば問題ありません。
逆に、自分ですべてをやろうとする人は、論理的とはいえません。なぜなら、一人でできることは少ないからです。他者と協力する方がより大きな結果を得られます。
ロジカルシンキングを5ステップで実践
それでは、具体的にロジカルに物事を考えていく方法について紹介します。基本的には、次の5つのステップで進めます。
2.フレームワークを使う
3.現状を分析する
4.仮説の立案と検証をする
5.アクションプランを実行する
それでは一つずつお伝えしていきます。
1.課題を見つける
課題(テーマ)、目的とコンセプトを明確にし、その進め方を決めるステップです。この課題設定が、最も大切です。なぜなら、よい課題設定が、問題解決の成果の質を決めるからです。
「誰も気付かなかった課題」や「誰も手をつけることができなかった課題」を解決すれば、大きな成果が得られます。
たとえば、不治の病の治療法が見つかれば、ニュースになりますが、風邪を治療する方法は、そこまでインパクトはありません。つまり、課題設定の質が低いと、問題解決の質も低くなります。
2.フレームワークを使う
課題を「要素」に分解します。最適な要素に分けることで、考えやすい形にするのです。
このとき、分解方法は、フレームワークを利用するのが一般的です。たとえば、マーケティングの4P分析や3C分析が有名です。こういったフレームワークを選択するとスムーズに要素分解できます。
もし、いいフレームワークを思いつかない場合は経験者に聞いてみるといいでしょう。
3.現状を分析する
フレームで分けた要素ごとに対して、現状を分析します。このとき、「こうだろう」という予測をするのは避けましょう。できるだけ、生の声やデータの情報を収集します。情報にバイアス(偏り)があると、最適な判断が難しくなります。
そのため、できるだけ偏りの偏りのない情報に基づいて、現状を確認することが重要です。
4.仮説の立案と検証をする
現状を分析した結果に基づき、何をすべきかを案(仮説)を考えます。そして、その仮説が正しいかどうかを検証します。
もし、仮説の検証が難しければステップ2に戻ります。別のフレームをあててみたり、内容を再検討します。
5.アクションプランを実行する
「誰が」、「何を」、「どこで」、「いつまでに」、「どのようにして」を決めて具体的な行動を実行します。ここでは5W1Hをベースに考えるとよいでしょう。
これ以降は、プロジェクトをマネジメントするステップになります。
論理的に伝わらないときの2つの問題
自分は論理的に説明していると思っていても、実はそうでないことがあります。例えば、上司に説明したり取引先に提案したりすると、反論されたり質問されたりすることがあります。
実際、質問で「その意見の根拠は何?」と聞かれたり、「他の可能性はないの?」と言われるのです。
こういった反論が起こるのには簡単です。説明を受けた側が「この人は、何がいいたいのか分からない」という状況に陥っているからです。
そして、この状況になる原因は以下の2つに集約されます。それでは、この2つの原因について深堀していきます。また、このような課題を解決するためのコツも紹介します。
原因1|本当にそうなの?
ある提案をしたとき、「本当にそうなの?」と質問されることがあります。これを聞かれる原因は、話のつながりが弱いと思われています。
例えば、「会社に無断欠席するのはダメだ」と説明されたとき、どう感じるでしょうか。「本当にそうなの?」と感じる人も少なくないはずです。
しかし、これは上述の通り、以下のような説明を受ければ納得できます。
・上司のBさんがAさんの急ぎの仕事を他の誰かに依頼する必要がある
・Aさんが来るかどうか分からないと判断がつかない
・会社に無断欠席するのは(上司Bさんの判断が遅れるから)ダメだ
「本当にそうなの?」と聞かれても、このように説明できれば、相手は納得してくれます。
「本当にそうなの?」と聞かれたときに答えればいい
このとき、注意したいのが最初から詳しく説明してしまうことです。説明は、少しずつ小出しにするのが基本です。
なぜなら説明が長いと相手の聞く気がなくなるからです。上司や先輩はあなたの提案を聞きたいのではなく、提案を理解して仕事の判断をしたいのです。
例えば、最初から詳しい説明をしてしまうと聞く側は混乱します。情報が多くなって理解が追いつかないのです。また、説明が長くなれば、不要な情報も入ってきます。
そのため、一度に知っていることを全て話すことはお勧めしません。逆に、「本当にそうなの?」と質問されたら答えるようにすると、相手に理解してもらいやすくなります。
聞かれたら説明できるような準備をしておく
ただ、このとき重要なことは自分の説明には根拠や理由を準備しておくことです。
なぜなら、相手の質問に対して何の準備もしていないと、考えのない人や直感的な人という印象を与えてしまうからです。
たとえば、「会社に無断欠席するのはダメだ」と主張して、「本当にそうなの?」と聞かれたとします。
このとき、「会社に無断欠席するのはダメなのは普通のことです」と反論した場合、「そう考える理由を知りたい」と言われてしまいます。
そして、この人は論理的に考えるのは不得意で、直観で行動するタイプだと思われてしまいます。そのため、自分の説明には根拠や理由を準備しておくことが重要なのです。
原因2|それだけなの?
ある提案をしたとき、「それだけなの?」や「他の可能性はないの?」と質問されることがあります。これを聞かれる原因は、「可能性の検証が足りない」という印象をもたれています。
例えば、新規インフルエンザワクチンの商品開発の検討結果をプレゼンしたとします。
項目 | 結果 |
Customer(市場・顧客) | インフルエンザの罹患者数○○ |
Company(自社) | 他製品のワクチン製剤の実績 |
といった検討結果を見せたとき、上司から必ずくるのは「”競合”の分析結果はどうなの?」という質問です。
なぜなら、3C分析のCompetitorが不足しているからです。3C分析とは、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)を分析することです。
これらの3つの視点から、経営上の課題を発見したり、戦略を練ったりするために活用するフレームワークです。
このように検討結果に不足があると、説明を受けた側は「それだけなの?」という質問をしたくなるのです。
フレームワークを活用する
「それだけなの?」と聞かれる回数を減らすには、フレームワークで考えるクセをつけておくことです。
フレームワークとは、先人が見出した考え方の枠組みを活かし、それをフレームとして当てはめて思考する方法のことです。
例えば、数学の公式に「ピタゴラスの定理(三平方の定理)」があります。数学の問題では、このような公式を使うと簡単に問題を解くことができます。
フレームワークは数学の公式と同じで、うまく使えば課題解決が一気に早まります。
こちらの記事で、フレームワークを含めて解説しています。あわせて読んでみてください。
ロジカルシンキング(論理的思考力)を問題、クイズ、例題で鍛える
ロジカルシンキング(論理的思考力)を鍛える方法は数多くあります。問題、クイズ、例題でレベルアップしたい人は以下のトレーニング方法がお勧めです。
論理トレーニング|文章例題を解いて論理力を磨く
論理的思考力が高い人は、相手の言いたいことを整理整頓できます。なぜそのようなことができるかというと、相手の主張を構造化できるからです。
例えば、論理的思考力が高い人は相手の発言を聞いて「主張」を見抜き、「主張」を支える「論拠1」「論拠2」「論拠3」のつながりを見極めることができるのです。
こういった力は、トレーニングで磨くことができます。紹介している本は、文章の論理(流れ)を読み解くためのコツが数多く紹介されています。
問題と解答が付いているので、自分が間違った箇所が分かるので、トレーニングにはお勧めです。
この本の例題を全問2,3回解けば、自ずと論理的思考力を高めることができます。実際、私もトレーニングをしたおかげで論理的思考力を鍛えることができました。
パズル問題|クイズで論理的思考を磨く
「論理パズル」という本があります。その本には、論理的思考力を試すクイズが書かれています。
クイズのような問題が多いですが、回答には論理的思考力が求められます。
例えば、以下のような問題があります。
リンダという女性がいます。彼女は独身で、とても頭がよくはっきりとものを言う性格です。大学では哲学を専攻していて、人種差別や民族差別などの社会問題に深くかかわっていました。リンダの職業は次のどちらの可能性が高いでしょうか?
A)銀行員の窓口係
B)女性解放運動を行っている銀行の窓口係
答えはAです。
なぜなら、BはAに含まれるので「Bの方がAより確率が高い」ことはないからです。
具体的にいうと、「20歳の大学生」よりも「大学生」の方が必ず多いです。つまり、「女性解放家で銀行の窓口係」よりも「銀行の窓口係」の方が必ず多いのです。
このような問題を解くトレーニングをしておくと、ロジカルシンキングを高めることができます。「論理パズル」という本には、このような論理的思考力を試す問題がたくさん紹介されています。
クリティカルリーズニング|資格試験の問題を活用
クリティカル・リーズニングは、GMAT(ビジネススクールへの入学に必要な試験)でも出題されます。
そのため、ロジカルに考える力を磨いたりレベルを測ったするにはお勧めの書籍です。問題を解きながら順に読み進めれば自然に論理力がつきます。
また、実際のGMATの試験問題のCritical Reasoningのパートを勉強するのもお勧めです。
ロジカルリーズニング|ウェブサイトの問題
ロジカルシンキングの簡単な問題なら、こちらの問題を試すのもいいでしょう。
しかし、問題が種類が少ないためあまり満足できるようなものではないかもしれません。また、英語サイトなので必要であればGoogle翻訳を使ってチャレンジしてみてください。
最もいい方法は論理的思考力の高い人からアドバイスをもらうこと
クイズや例題で学ぶのもいい方法ですが、もっともお勧めするのは論理的思考力の高い人からアドバイスをもらうことです。
なぜなら、今のあなたに適したアドバイスをもらうには、あなたの状況を知っている人からのアドバイスが最も有効だからです。
例えば、高校1年生が数学を勉強する場合、微分から勉強するとどうなるでしょうか。微分は高校2年生、3年生で勉強する分野なので、高校1年生では簡単に理解できません。
これは、ロジカルシンキングを勉強しようとする人も同じです。自己流で勉強する場合、自分のレベルを正確に把握しないと、どの問題を学べば自分の成長につながるか分かりません。
いきなりレベルの高い問題をやってしまったり、レベルが低すぎる問題をやってしまったりすると、せっかくの勉強が無駄になってしまいます。
もちろん、書籍やテキストで勉強するのは悪いことではありません。ただ、自分のレベルに合った練習をしないと、効果的に論理的思考力を高めることはできません。
フレームワークを使いこなしてロジカルシンキングを実践で使う
ロジカルシンキングは実践が重要です。本やテキストで学ぶのも、全ては仕事や面接で使えるようになるためです。
そこで、普段の仕事や生活で使えるロジカルシンキングを高める方法について紹介します。それはフレームワークを使うことです。
PREP、FOCEP、といった使えるフレームワークは数多くあります。それを活用して日常の中で論理的思考力を高めていくことが大切です。
具体的なフレームワークの使い方は、以下の記事で解説しています。ぜひ合わせて読んでみてください。
論理的かどうかは相手が決める
ここまで紹介してきた方法を使えば、論理的な説明はできるようになります。しかし、自分がどれだけ論理的に説明したつもりで、相手が理解できていなければ意味がありません。
なぜなら、論理的に話すことの目的は、相手にこちらの提案を理解してもらい何かしらのアクションを取ってもらうことだからです。
たとえば、上司から「根拠が分からない」といわれることがあります。そのとき、「上司が問題に対して理解ができていないせいだ」と感じてしまうことは少なくありません。
もちろん「それくらいは上司なら理解してほしい」と思う気持ちは分かります。ただ、上司が分かるように説明をできなかったことにも問題があるのです。
重要なのは、相手が反論したり質問したりするとき、相手に理解してもらっていないという事実を認識することです。感情と行動を切り分けて、次の行動につなげる方が生産的といえるでしょう。
ロジカルに考えることが重要でないときもある
ここまで、論理的に伝える方法を紹介してきました。しかし、すべてのことを論理的に考えて話す必要はありません。なぜなら、ロジカルに話すことで望む結果が得られない危険があるからです。
たとえば、以下の場合は論理的に考えようとすると失敗することが多いです。
・アイデアを出す
・相手の不平・不満を聞く
詳しく解説していきます。
アイデア出しにロジカルシンキングは不要
議論や会議でブレインストーミングを利用してアイデアを出す場合があります。こういったアイデア出しでは、既存の考えを越えるような何かを出すのが目的です。そのため、順序立てて考えるようなロジカルシンキングは危険です。
なぜなら、論理で考えるとアイデアの幅が狭まってしまうからです。例えば、格安航空会社(LCC)では、それまで常識だった機内での無料食事サービスなどをやめたり、グリコでは子ども向けのお菓子を大人向けに転換したりしました。
このようなアイデアは、論理的に考えてしまうと出てくることはありません。そのため、アイデア出しでは、論理的に考えるのは不要です。
相手の不平・不満を聞く
また、相手の不平や不満を聞く場合も論理的思考は不要です。なぜなら、不平や不満の多くは聞いてほしいだけだからです。
例えば、パートナーや部下と何気ない話をしている場合を考えます。このとき、話の多くは解決策を求めているのではなく、聞いてほしいだけです。実際、私は論理的に伝えることがクセになっているので失敗した経験があります。
実際、「上司から○○って言われて、△△だったんだよ」と言われたとき、「それは、上司に事前に伝えなかったのが原因だよね」と私は伝えてしまったのです。
そのとき、相手は「そんなことを言ってほしいんじゃない」と不満そうに言ってきました。こういったケースでは、「そうだったんだだね」と相槌を打つだけで十分です。
このようにロジカルシンキングでは、見極めが重要です。常に論理的に考えればいいわけではありません。場合分けをして使い分ける必要があるのです。
ロジカルシンキング以外で覚えておきたいスキル
ロジカルシンキングは、社会人に必須のスキルの一つなのですが、他にも効果的な考え方があるので、紹介します。
水平思考(ラテラルシンキング)
水平思考は、別名ラテラルシンキングとも呼びます。ロジカルシンキングがわかりやすく説明するための考え方に対して、水平思考は突拍子のない考えを出すための考え方です。
水平という名前は、論理的思考が縦に深堀するのに対して、水平思考とは横展開を行うための考えであるのが由来です。
水平思考を使うことで、「想定の範囲外からの驚くような問題解決」が可能になります。
センターピン思考
センターピン思考とは、「選択と集中」を行うべき「重要な部分を見極める思考」です。たとえば、ボーリングで高得点を取るにはセンターピンを狙います。
なぜなら、センターピンを倒せば、後ろのピンも、同時に倒れてくれるからです。これは、仕事でも同じです。センターピンとなる課題を解決することで、他の課題も同時に解決することができます。
例えば、仕事が遅い人がいます。このような人に「仕事を早くして」と伝えても解決しません。なぜなら、仕事が遅くなっているのは結果であって原因ではないからです。
本当の原因は、仕事のやり方を知らないことが原因かもしれませんし、上司に怒られてばかりで自信を失っているのが原因かもしれません。
このようにセンターピン思考をすることで本当に重要なことに集中することです。ビジネスの現場では、センターピン思考をできる人が意外と少ないものです。
詳しく知りたい方は、こちらの記事を読んでみてください。
TOC(制約理論)
TOCとは、制約理論のことです。さまざまな問題をつなぎ合わせることで、本当の問題を見えてくる、という問題解決の手法です。
多くの問題解決では「木を見て森を見ず」、つまり部分最適になりがちです。しかし、制約理論を使った問題解決では、問題のつながりを捉えることができるため、全体最適が可能になります。
ロジックよりも大切なこと
「人を動かす」の著者、Dale Carnegie(デール・カーネギー)は言いました。
およそ人を扱う場合には、相手を論理の動物だと思ってはならない。相手は感情の動物であり、しかも偏見に満ち、自尊心と虚栄心によって行動するということを、よく心得ておかねばならない。
たしかに、論理的であれば人に分かりやすく説明することができます。しかし、それ以上に感情も大切です。なぜなら最終的に人が行動するかどうか決めるのは感情だからです。
例えば、ギャンブルで稼ぐには確率を調べる必要があります。確立の数字から判断して、支払った額を上回るリターンが出れば利益が出るのです。
そのため、戦略を練ってギャンブルを行う必要があります。しかし、多くの人は「ギャンブルで勝てば儲けることができるかも」という感情によってギャンブルに手を出してしまうのです。
つまり、どれだけ論理的に正しくても感情的にやりたいと思えばやるし、やりたくないと思えばやりません。
これは仕事でも同じです。言い方が厳しかったり、意見を押し付けたりすれば、相手は動いてくれません。それは、リスペクトのない相手に対しては「この人の言うことはわかるんだけど・・・なんか嫌」となってしまうからです。
ロジカルシンキングで順序だてて説明する力は重要です。分かりやすく伝えることができれば、上司や部下は安心して協力してくれるようになります。
会社で働いてみると、論理的思考力が高い人はあまり多くないため、論理的に考えることができれば、周囲から信頼され重宝されます。しかし、論理的に考えるだけでは不十分です。
なぜなら、論理だけで人は行動しないからです。「人は最終的には感情で動く」という認識を持っておくこと、ロジカルシンキングは「わかりやすく伝える手段であって目的ではない」ことを理解しておくのが重要です。