エクセルマクロVBAを使えるようになると、「周囲から教えてほしい」と言われることがあります。頼まれたからには、参加してくれる人がマクロを使えるようになるように教えたいと思うものです。
しかし、残念ながら、エクセルマクロを普通に教えるだけでは失敗します。なぜなら、普通に教えるだけでは「もっとマクロを勉強したい」と思ってもらえないからです。
そのため、一生懸命教えたにも関わらず、参加者は「役立ちそうなのは分かるけど、難しそうだな」で終わってしまうのです。
このような結果になる理由は簡単で、教える側が「正しい教え方」を理解し、実践できていないからです。
そこで、初心者にエクセルマクロVBAを教えることになった人のためにつかみや適切な教材、注意点について紹介していきます。
初心者にエクセルマクロを教えるときにやってしまいがちな失敗
マクロを教えるとき、手応えを感じないことがあります。とくに、講義が終わった後、参加者がマクロを理解していなかったり使おうとしなかったりするのはよくあることです。
せっかく時間をとってマクロについて伝えたのに、このような反応が返ってくると非常に残念な気持ちになります。
実際、私もマクロをセミナーで教えたけれど、参加者がマクロ学習を継続してもらえなかったことは多々あります。
ここでは、私の経験をもとにマクロを教えるときの失敗事例を紹介します。具体的には以下の3つです。
失敗2|マクロの必要性を訴求していない
失敗3|マクロって難しそうな印象を与える
それでは、詳しく解説していきます。
失敗1|講義形式でマクロを教える
マクロに限らず、何かを教えるときは講義形式はお勧めしません。講師が参加者に一方的に教えるスタイルは、参加者が積極性を失ってしまうからです。
例えば、学校の授業が退屈なのは講師が一方的に教えるスタイルをとっているのが原因の一つです。
そのため、積極的に参加する姿勢をもたせるような講義をする必要があります。
ただ、これからマクロを教えようと考える人の多くは、講師が一方的に伝えるやり方になってしまいがちです。
学校教育が一方的に教えるスタイルをとっているせいか、集合教育と聞くと、講師が参加者に教える方法をイメージしてしまうのでしょう。
私も最初の頃は、一方的に伝えるだけで参加者からの質問はゼロでした。そのため、講義形式で講師が一方的に教えるのはお勧めしません。
お勧めのやり方は後半でお伝えしています。ぜひ、このまま読みすすめていってください。
失敗2|マクロの必要性を訴求していない
マクロの講義をする上で、重要なのはマクロの必要性をどれくらい分かってもらえるかです。
なぜなら、必要性を感じればもっと勉強したくなるからです。逆に、マクロの必要性を感じてもらえないと参加者はマクロ学習をする気になりません。
例えば、マクロのデモを見せることはよくあります。このとき、「マクロを使えば、仕事が楽になるんだ」と分かってもらう目的であれば、デモは効果的な手段です。
しかし、マクロのデモを見せるとき、自慢話になってしまうことは少なくありません。実際、私は自慢話になってしまった経験があります。
ご存知の通り、マクロを使えばウェブサイトから情報を取得できます。ウェブサイトから情報を取得するマクロは高度なプログラムを書く必要があるため、ウェブから情報を取得するマクロは、マクロ初心者に見せるデモには最適だと考えたのです。
しかし、実際にウェブサイトのマクロを見せたのですが、参加者の反応はよくありませんでした。それは、参加者の実務に直結しているような作業ではなかったからです。
デモとして見せるにはマクロの必要性を感じてもらえるようなものを選ばないと効果が低くなってしまうことを学びました。
つまり、参加者の実務に近いデモを見せて、いかに必要性に気づいてもらえるかを気にする必要があるのです。
失敗3|マクロって難しそうな印象を与える
マクロを使うとき、どうしても設定について紹介する必要があります。
なぜなら、マクロ初心者の多くはマクロを使ったことがないからです。そのため、エクセルに開発タブを出現させるところから始める必要があります。
ただ、このとき厄介なのは設定を教えることで難しい印象を与えてしまうことです。
とくに、初心者ほどマクロによる自動化の部分に興味があります。そのため、自動化以外の部分である「設定」や「プログラムのコーディング」などに抵抗を感じるのです。
実際、私はマクロの設定から教えたことがあるのですが、「難しそう」や「めんどくさそう」といったイメージを与えてしまいました。
その結果、マクロにあまり興味をもってもらえませんでした。このように教える順番によって、「マクロって難しそう」という印象を与えてしまいます。
失敗2とあわせて、興味をもって学習してもらえるように教える順番を考慮する必要があるのです。
マクロを教えるときに講師が注意すべき7つのこと
せっかくエクセルマクロを教えるのなら、できれば参加者にマクロに魅力を知ってもらいたいと思うのは自然なことです。
とくに、継続してマクロを学習してもらえる人が一人でも増えたら、講師冥利に尽きるというものです。
しかし、参加者にマクロの魅力に気づいてもらい勉強をしてもらえるようにするには簡単ではありません。なぜなら、正しい教え方を理解し、実践する必要があるからです。
ここでは、私が教えるときに大切にしていることをお伝えします。
ポイント1|目的を明確にする
最初に注意すべきは、マクロの教える目的を明確にすることです。なぜなら、その目的に応じて教える内容や順番が変わるからです。
例えば、「今のマクロ業務を引き継ぎたい」が目的なら以下のような内容を伝える必要があります。
・同じ部署の人
内容
引き継ぐマクロに限った使い方、始め方
一方で、「マクロに興味をもってくれる人を増やしたい」や「マクロで業務を効率化する方法を一人でも多く伝えたい」という目的をもっているなら話は別です。
・マクロに少しでも興味がある人
内容
・マクロに魅力に気づいてもらう
・上手にマクロを作るための設定を知ってもらう
・実際にマクロを作ってもらう
・今後の学習方法について伝える
このように、「自分はなぜマクロを教えたいのか?」や「参加者にどうなってほしいか?」は整理しておくことが大切です。そうしないと、「何を伝えるか?」が決まらないのです。
ポイント2|一回のセミナーでマクロを習得することはできない
マクロを教えようとしている人なら、マクロを1日、2日学んだだけでは使えるようにならないことは理解しているはずです。
実際、どんなに習得が早い人でも1回教えただけで使いこなせるようになるのは難しいです。そのため、その日限りで学習を終わらせる内容にしてはいけません。
ではどうすればいいのかというと、学習を継続したくなるような内容にするのです。
例えば、私がやるのは以下のような内容です。
やること | 狙い・意図 |
デモを見せる | 「こんなことができるようになるのか」という期待感をもたせる |
マクロを実際に作る | 「マクロって難しいと思っていたけれど、初心者の自分にもできるんだ」と思ってもらう |
より深く勉強する方法を提示する | 「今後仕事で活かせるようになるには、これをやればいいんだ」と継続する方法を理解してもらう |
こういったことを配慮して、マクロセミナーの構成を考えることが重要です。
ポイント3|ワークを入れる
マクロ研修では、「あっ、自分にもできるかも」と思ってもらうことが重要です。
なぜなら、ポイント2でお伝えしたようにマクロ学習には継続が必要だからです。そして、継続には「できるようになるかも」という期待感が必要なのです。
例えば、子供でも大人でもゲームにハマる人があります。その理由は簡単で「もっとできるようにやりたい」と思うからです。やればやるほど達成感を味わえるのです。
わかりやすく言うと、「ゲームをする→ご褒美をもらえる→もっとゲームをする→もっといいご褒美をもらえる」というサイクルが回っているのです。
マクロ学習でも同じように構成を考えるといいです。
マクロを作るワークをやる→マクロが動くのを見て「自分にもできた!」と達成感を味わう→もっと難しいマクロを作る→もっと大きな達成感を味わう
そのため、簡単なワークから始めて達成感を感じてもらえるように進めていくことをお勧めします。
ポイント4|相手の心をつかむようなデモを見せる
既にお伝えしましたが、参加者の興味をひきつける上でデモは強力です。なぜなら、普段の業務が自動処理されるのを目の前で見ることになるからです。
例えば、以下の動画を見せるだけでも参加者の目を釘付けにできます。
実際、私もマクロのセミナーを開催するときは必ずデモを見せるようにしています。マクロの期待感をもってもらい、「勉強したい」と思ってもらうにはデモが最適だからです。
デモ動画については、こちらの記事で紹介しています。ぜひあわせて読んでみてください。
ただし、あまりデモを見せすぎると時間がなくなってしまいます。多くとも3つまでにするといいでしょう。
ポイント5|継続するのは2割
現実的な話として、マクロを本当に学びたいと考えている人は多くありません。体感的には2割いればいい方です。
このとき、初心者講師にありがちなのが、「全員がマクロを使えるようになってほしい」と思ってしまうことです。
例えば、私は社内で講師をしていたとき、ついつい参加者全員にマクロを学んでほしいと思ってしまいました。
その結果、マクロに興味の低い人になんとか教えようとして全体の進行が遅れたり教え方の下手さに自己嫌悪になってしまったりしました。
講師である自分が「教えたい」や「学んで欲しい」という思いがあるのと同様に、参加者にも思いがあります。もしかすると、参加者にはもっとやりたいことが他にあるかもしれません。
つまり、最終的に学ぶかどうかを決めるのは参加者本人です。もちろん、講師として参加者が勉強するように背中を押すことはします。
しかし、参加者にも選択の自由があります。それは尊重し、必要以上になんとかしようとするのは相手の望むことではないでしょう。
例えば、子供の将来を決めようとする親がいます。これは、子供の自由を奪う行為だと思っています。選択肢は与えるが、最終的に継続するかどうかを決めるのは参加者本人ということは意識しておくといいでしょう。
ポイント6|インタラクティブに進める
インタラクティブに進めるとは、講師と参加者がやりとりをしながら学ぶスタイルのことを指します。その逆は、一方向で教えるスタイルです。学校教育では、一方向で教えるスタイルが多いです。
その理由は、短時間で知識と正解にたどりつく方法を教えることができるからです。先生と生徒がインタラクティブなやりとりをしていると、多くのことを学ぶ時間がなくなってしまうのです。
学校教育では一方向の授業になりがちになるのは、教えることが膨大なのが原因の一つです。
一方、インタラクティブで大切にしているのは、参加者が自分で考える力を育むことです。そのため、講師が説明する時間よりも、参加者が考える時間を多くとる必要があります。
なお、インタラクティブに進めると、予想のしない答えが返ってくることがあります。そのせいで、本論を違う方に進む危険性があるので、講師は注意が必要です。
このような時間や進め方のデメリットはありますが、それでもインタラクティブに進めるスタイルをお勧めします。
それは、アメリカ国立訓練研究所によると、学び方の違いによる脳への定着率は以下のようになるからです。
教え方 | 脳への定着率 |
1講義を聴く | 5% |
2文章を読む | 10% |
3映像を見る | 20% |
4実演・実験機材で学ぶ | 30% |
5グループ討論をする | 50% |
6自分で体験する | 75% |
7他人に教える | 90% |
この報告によると、講義を受けるだけだと記憶に残るのは5%です。また、教科書のような文章を読むのでは10%しか頭に残らないのです。
逆にインタラクティブに進めることで3~6の部分を行うことができます。つまり、脳への定着率を高めることができるのです。
できるだけ自分で体験すること、理解が早い人は他人に教えることを伝えておくとさらに深い学びを得ることができます。
ポイント7|アンケートをとる
マクロに限らずセミナーでは、アンケートを準備しておくと役立ちます。
なぜなら、実際に声をもらえるからです。例えば、講師からみると理解できたように見える人でも、実は理解がイマイチだった人がいるものです。
逆に、自分の説明が不十分だったと思えることでも、意外に良かったと言ってもらえることがあります。
このような生の声はアンケートをとってみないと分かりません。また、次回のセミナーを開催するときにも役立ちます。
そのため、ぜひセミナー開始前にアンケートを準備しておくといいでしょう。実際に、私が社内でセミナーをしたときには以下のようなアンケート結果をもらいました。
・講義時間がもっと長いと思う
・座学と実践講座が明確に分かれており、PC活用の意義について考える機会になった
・これといった問題点は思いつきません。非常にわかりやすかったですし、直接業務に生かせる内容だったので、自然と身が入りました
・講義の入り方に問題があった
・お話の内容が端的で、わかりやすく、声も大きかったので、受講しやすかった。時間の制限もありましたが、柔軟に対応している点がよく、受講内容も現場を見据えていて良かった。
・時間が限られていたので、自己紹介の時間を取るよりも講義をしてほしかった
・講義時間が短いので、大変だとは思いますが、手を動かす作業は多い方が良いと思います。
・実践が少なめなのが、残念だった
・時間配分としては、私が感じたのは、話はかなりわかりやすいので、簡潔にして、実技の時間を増やしてほしいと思いました。便利なショートカットやよく知っている機能を教えていただきたいです
・講義は興味深かったのですが、少し早口だった気がします
・もう少し突っ込んだ内容を知りたかった
・ゲーム形式で自分の能力がどの程度であるかを知ることができたのは、非常に面白かった
・自分のPCスキルを確認できるいい機会になった。話し方も非常によく、受講者目線で講義されており、充実した内容だった
いただいたアンケートは、いい意見なら喜び、改善が必要なら次につなげるようにします。
教え方を学べる教材|実際に教えている姿を見るのが一番
ここまで、教え方のコツやポイントについてお伝えしてきました。しかし、この記事を読むだけではうまくいきません。
なぜなら、初心者でもマクロの理解が進むような説明の仕方、言葉選びまでは伝えきれないからです。
例えば、マクロを教えるときのハードルの一つは、「マクロとは一体何か?」を初心者に分かるように説明することです。
知っている人からすれば、マクロとは、「VBというプログラム言語で動く自動化ルール」といった説明で十分通じます。
しかし、マクロ初心者にこのような説明をしたら、その瞬間マクロへの興味が絶たれてしまいます。もっとわかりやすく言えば、その時点でゲームオーバーです。
参加者は敏感なので、「あっ、自分には分からない世界の話だ」と思い、以降の説明を聞いてもらえません。
そのため、マクロを教えるのであれば、マクロをスムーズに理解してもらえるような説明を用意しておく必要があるのです。
そのとき、もっとも効果的なのは、実際に教えている姿を見ることです。できることなら、実際にマクロセミナーに参加してみるのがお勧めです。
何年も教えてきた先生がどのような話をどのような順番でしているかを学ぶのです。そうすれば、教える経験が乏しくても上手に説明できるようになります。
ただ、忙しくてマクロセミナーに参加できない人も多いはずです。そこで、お勧めなのがこちらの無料動画です。
こちらの動画はマクロ初心者にマクロの使い方を説明しています。そのため、こちらの動画で話している内容を活用すれば、講師経験が少なくても上手に教えることができます。
話す内容や話す順番をメモしながら動画を見てみるといいでしょう。私も社内講師をしたときは、こちらの動画での説明を活用しました。
そのおかげで、満足度の高い社内セミナーを開催できました。ぜひ教え方を学んでみてください。
ここまで、マクロの教え方について紹介してきました。この記事は、「社内でマクロを教えたい」という声をいただいたことがきっかけで作成しました。
私自身、人に教えることを通じて「マクロの学び方」だけでなく「教え方」も学ぶことができました。参加者にマクロを学んで成果につなげてもらうだけでなく、自分の成長の機会を得ることもできたのです。
私はそういったチャレンジをする人の背中を押せる存在でありたいと思っています。ぜひ、マクロの社内研修にお役立ていただけると嬉しいです。
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