20代が転職するきっかけに「仕事の将来性」や「ワークライフバランス」があります。
しかし、転職を考えても実際に行動する人はごくわずかです。
なぜなら、今の仕事を辞めるのは簡単ではないからです。
例えば、残業が多くスキルアップを行う時間が取れないだけでなく、現状を変えることへの恐怖もあるからです。
そのため、「仕事を辞めよう」と口にするだけで実際には行動しないのです。
ただこの記事で紹介する人は、残業ばかりの公務員を辞め外資系企業の経理に転職しました。
その結果、自分がやりがいを感じることができる仕事を行い、プライベートも充実した生活を送れるようになりました。
しかし、何もしないで現状を変えることができたわけではありません。
スキルアップのために資格を取得したり、将来について考えたりして積極的に行動した結果として、ワークライフバランスの充実した生活を手にすることができたのです。
そこで公務員から外資系の経理に転職し、自分の目指した働き方を手に入れた人の体験談・経験談をお伝えします。
この記事が、これから公務員から転職や経理への転職を考えている人のヒントになればと思います。
※便宜上、取材した人を「Kさん」とし、インタビュアー(私)は「管理人」と表記します。
目次
地方公務員から外資系企業の経理に転職した体験談
●管理人
Kさんのご経歴を教えていただけますか?
●Kさん
私は現在20代後半で、外資系保険会社の経理を担当しています。
前職は10年弱ほど地方で公務員をしていました。公務員のときに結婚し、その後で今の会社の経理に転職をしました。
●管理人
Kさんはもともと地方公務員をされていたということですが、外資系企業に転職をしようと考えたきっかけは何だったのでしょうか?
外資系企業の経理に転職したきっかけ
●Kさん
きっかけは世間で話題になっているダイバーシティです。
このダイバーシティに自分も触れたかったのが大きな理由です。
例えば、日本では「年功序列」、「縦社会」、「残業の多さ」、「休みや働く時間への制限が多い」などがあります。
実際、公務員時代にはこの経験を数多くしてきました。特に、残業はひどいとき月120時間を超えていました。
●管理人
「残業だけで」で120時間ですか?
●Kさん
はい。残業は全体の一部ですが、官庁を含めた日本の企業では、このような一昔前の働き方を踏襲している企業が多いと感じていました。
そこで、少しでも海外の企業文化に触れたいと考えるようになったのです。
そこで、ダイバーシティをより感じることができる企業として、外資系企業への転職を決めました。
●管理人
なるほど。確かに私が働いていた企業も内資(本社が日本にある)でしたが、残業が多い部署がありましたですね。
120時間ほどではありませんが。(笑)
ただ一言で外資系企業といっても、いくつか職種はあると思います。
その中でも経理に転職をしようと考えた理由は何だったのでしょうか?
外資系企業の「経理職」を志望した理由
●Kさん
外資系企業の中でも、経理を選んだ理由は自分の強みや実績を活かせると考えたからです。
例えば、私は自分のスキル欲しさ、また、それを証明できるものが欲しくて日商簿記3級と2級を取得していました。
この資格は公務員として働いているときに取得しました。
また公務員時代に経理業務を担当していたことも大きいです。
実際、財務諸表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー)の作成や地方税の申告、各種会計帳簿(仕訳日計票、総勘定元帳、試算表等)の作成をしていました。
このような自分の強みや実績を考えた結果、外資系の中でも経理という分野を選びました。
●管理人
もともと経理のような仕事をしていたわけですね。
それでは、公務員から外資系企業の経理に転職をして働き方はどのように変わりましたか?
20代が外資系企業の経理に転職をして変化した3つの働き方
●Kさん
働き方の変化は大きく3つあります。
働き方1|仕事が楽しくなった
働き方2|スキルアップができる
働き方3|ワークライフバランスが確保された
働き方1|仕事が楽しくなった
まず第一に毎日の仕事が楽しくなりました。なぜなら公務員時代はルールに則(のっと)るのが正解だったからです。
例えば公務員の仕事では、法律や条例、規則などを先に考える必要があります。
そのため型にはまった仕事がほとんどで、仕事で個性を出すのが難しい環境でした。
しかし、転職後はそのようなルールはありません。自分の個性を出して働けるおかげで楽しく働けています。
例えば、公務員時代の仕事は「書類は全て紙で管理する」といった時代に逆行した根強いルールがありました。
実際、「決裁の手順」や「書類の保管方法」などの基本的な仕事の進め方も全て規則で定められていました。
そのため、上司に業務内容を説明する時の書類も、ミーティング資料も全て紙で行うことが必須だったのです。
また、全職員のPCは有線LANしか使えない制限がありました。
ですので、「会議室にPCを持ち寄って画面共有しながらミーティングを行う」といった事は物理的に不可能でした。
このようなにルールや環境の縛りがあったため、業務効率化のための議論すらできませんでした。
●管理人
公務員ってすごい非効率的な中で働いているのですね。びっくりしました。(笑)
その後、外資系企業の経理に転職するわけですが、働き方はどのように変わりましたか?
●Kさん
外資系経理として働くと全く違いました。
経理はその業務内容の性質上、多くのシステムを使って仕事をします。しかし「〇〇のシステムを使用しなければならない」といった余計なルールなど当然ありません。
そのため、システムの入れ替えも念頭に置きながら、常により良いやり方を模索できます。
実際に法人税等の申告業務で従来使用していた申告用のソフトの入れ替えを提案したことがあります。
新たなシステムの導入で40時間程/年の業務効率化を行いました。
私の場合は、業務を簡単にしたり時間を減らしたりすることに達成感があるため、このような改善ができて楽しいです。
●管理人
すごいですね。会社では多くの人が改善を行っているのですか?
●Kさん
メンバーがそれぞれ異なる提案をしています。
例えば、他のチームメンバーは勉強会を開いて知識をシェアする人もいれば、今話題となっている「健康経営」に着目する人もいます。
また、社員の健康意識を高める社内用のイベントを企画する人もいます。
このように個性を出して仕事や会社をもっと良くするために行動しています。
●管理人
活発ですね。提案をする人がたくさんいるのは、皆さんが楽しく働いている証拠なんだなと感じました。
働き方2|スキルアップができる
●Kさん
また、経理という専門性の高い職種のため、仕事の中で自分のスキルを磨くことができるのも魅力の一つです。
経理と聞くと、「いわゆるカタイ仕事なのでは?」と思う人も多いはずです。
当然ですが、経理はルールや法律がベースとなっている部分が大きいです。
実際、経費精算や各種財務諸表を作成する仕事は法律に基づいています。
しかし、それらの業務プロセスはいくらでも自分のアイデアを出すことができます。
例えば、フローの見直しをしたり、作業で使用するエクセルを改善したりすることが可能です。
実際に、私は経理として転職するまでVBA(*)を使うことができませんでした。
補足
(*)VBAとは、Visual Basic Applicationsの略で、エクセルやワードの業務を自動化するプログラムツールです。以下の動画のように作業をボタン1つで終わらせることができます。
VBAについては、以下の記事で詳しく解説しています。
●Kさん
しかし、VBAを使ったら仕事を一気に改善できることを知り、VBAを習得しました。
VBA習得には苦戦をしましたが、複数のデータを一つのシートに集計する業務を自動化しました。
「参照先データをコピーして集計表にペーストする」という繰り返しの作業が1クリックでできるようになりました。
その結果、週3時間の業務時間の短縮ができ仕事の効率化に貢献しました。
このように仕事の進め方を改善できるため、スキルをどんどん磨くことができます。
働き方3|ワークライフバランスが確保された
そして何よりワークライフバランスが確保されたのが大きいです。
例えば、休みが取りやすいことはとてもありがたいです。
公務員時代は休みが年2日程しかとれなかったのに、今の会社では最低12日(月1日)も取れます。
実際にチームメンバーは長期休暇をとって海外へ旅行したりもしています。
このようにプライベートを充実させることができるのは、チームで仕事を進めていることが大きな要因です。
例えば、繁忙期は全員で作業を分担します。そのおかげで、忙しいときでも残業を最小限に留めることができます。
実際、繁忙期は1人でやると月40時間は残業の必要があります。しかし、チームで分散することで月20時間にまで縮小することができました。
このように、チームで仕事を進めることができるおかげでプライベートの時間が増えました。
その時間を活用して、読書やスキルアップの勉強だけでなく、家族との団らんに時間を充てる事ができています。
●管理人
大きな変化ですね。のびのび働いているのが伝わってきます。
ところで気になったのですが、前職の公務員時代はかなりハードというか辛い仕事だったように見えるのですが、どのように働いていたのでしょうか?
転職前の公務員時代にブラックな働き方が今につながった
●Kさん
公務員から外資系企業に転職をしたのですが、そのきっかけは「ワークライフバランスが保てない」、「自分のキャリアが全く想像できない環境だった」というのがあります。
例えば、公務員だった時は毎日12時まで残業、土日出勤は当たり前でした。
正直言って「何のため」、「誰のため」に働いているかはわからなくなっていました。
あるとき、ふと自分の先輩職員や上司も同じようにワークライフバランスが崩壊している姿に気づいたんです。
実際、先輩職員や上司は残業で「ほぼ家にいない」状況で家族との時間も全くない状態でした。
公務員時代は転勤もあったため、先輩や上司の中には単身赴任している人も多かったのです。
先輩職員や上司の中には、平日はもちろん土日も家族のもとに帰ることができていない人もいました。
そして、久しぶりに家に帰ったら「飼っている犬に吠えられた」とか「3歳の娘がよそよそしかった」というエピソードを聞く事も珍しくありませんでした。
そして、自分もこうなりたいのだろうかと考えとき、「自分は絶対にこうはなりたくない」と思いました。
●管理人
すごい職場環境ですね。ちょっと想像がつきません。
●Kさん
ただ逆に言えば、このような働き方をしていたのが転職の契機になったとも言えます。
このような上司や先輩を見てようやく自分も将来を考えることができたんです。
そして「じゃあ自分はどんな仕事で、どんな環境で働きたいか」を真剣に考えたんです。
そのとき、英語が好きだったこと、日商簿記3級と2級を取得していたことから、それらを活かせる「外資系企業の経理」を目指すことを決めました。
●管理人
ワークライフバランスが出来ていなかったからこそ、将来について真剣に考えたのですね。
それでは、実際に経理に転職してよかったことや得たことは何でしょうか?
経理へ転職をして良かったこと・メリット
●Kさん
スキルがあれば、仕事で活躍しやすい点です。
なぜならルールを考慮したり人にお伺いを立てたりすることは少ないからです。
例えば、経理ではPCを必ず使います。そのため、PCの作業効率アップが「仕事のスピードアップ」に直結します。
具体的には基本的なショートカットキーの習得や、エクセル作業をする方であればVBAの理解を深めることで作業効率を大きく上げることができます。
●管理人
はい、私もそう思います。私は経理職ではありませんが、ショートカットキーやVBAを使って作業を効率化して会社の評価が上がりました。
経理でもPCスキルは大切なんですね。
●Kさん
はい。実は、私は転職するまではエクセルのスキルが高くありませんでした。
経理の場合、エクセルなどのオフィスソフトを使用することは多いです。
そのため、エクセル業務を効率的に処理するのが重要になってきます。
例えば、私の場合はエクセルでの集計作業の業務をしていたのですが、転職当初は複数のデータを元に集計表を作成するといった業務につまづいていました。
実際、私は多くの部署から同じフォーマットで提出させ、それを他のシートに集計し、分析する仕事を担当したことがあります。
ただその部署がとても多く、集計表のいろいろなシートにデータを貼り付けなければいけませんでした。
そのため、とても時間がかかっていたのです。
当時はVBAで自動化できることというのは早い段階で気づきましたが、他の業務が立て込んでしばらくはやり方を変えることができませんでした。
仕事にも慣れてきて、少し余裕が出てきた頃にエクセルのスキルを磨くことにしました。
エクセルのスキルを磨いたことで、当初のやり方に比べて仕事を月20時間程の効率化をすることができるようになりました。
これは私が行った改善の一例ですが、このような自分なりの工夫を積み重ねれば大きな時間を生み出すことができます。
このようなパソコンスキルの効率化は、自宅のPCを活用して学ぶことができます。
デスクワークが基本の経理はこのようなスキルアップが図りやすく、結果を認められやすいことがメリットです。
●管理人
それでは逆に経理に転職してよくなかったことやデメリットは何でしょうか?
経理・事務へ転職して良くなかったこと・デメリット
正直に言って、将来的には需要が下がる業種だということです。
なぜなら、将来的にはAIが行うことができる仕事の対象になってくると予測されるからです。
例えば、経理や事務の日常的な仕事は計算や集計作業といった様な定型的な作業が多いです。
そのため、AIで自動化されると大半の仕事は機械化されていくことが予測できます。
●管理人
たしかにそうですね。エクセルVBAを使えば、業務効率化できる仕事も多いように感じます。
今はRPA(Robotic Process Automation)も出てきているので、定例業務はどんどん自動化されますね。
●Kさん
はい、ただAIが導入された後にも残る仕事はあります。
それは、人の判断や感情が加わってくる様な業務です。
そのため、経理職はM&Aや会計処理について知識・経験のある人が必要とされる時代が来ると考えています。
このように経理のデメリットとしては、将来性が不透明であることです。
ただ変わりゆく環境を経験できるいいチャンスとも言えます。
結局は、自分自身がどのような将来のビジョンを描いているかが重要かと思います。
●管理人
それでは、経理への転職を迷っている人に向けて、経理職に向いている人の特徴を教えていただけますでしょうか。
経理への転職が向いている人の特徴
●Kさん
経理職に向いている人の特徴はいくつかありますが、すぐに思い浮かぶものを上げます。
特徴1|デスクワークが得意な人、好きな人
特徴2|スキルアップができる
特徴3|ワークライフバランスが確保された
経理に向いている人の特徴1|デスクワークが得意な人、好きな人
デスクワークといっても様々な種類がありますが、経理は特にデスクワークが得意な人に向いています。
ルーチンワークが多く、それらの多くがエクセルを使用することになるかと思います。また、経理は会計ソフトを必ずと言っていいほど使用します。
実際、私が勤務していた企業ではPCA会計DXを使っていました。
このソフトを使って、予算管理や日々の伝票入力、支出や入金管理、各会計帳簿の作成や決算資料の出力、または経営分析など経理が行う業務の多くを進めていきます。
また、会計ソフトを使って出力したエクセルデータを加工して分析や帳簿を作る事も多いです。
このようにPCを使った業務が大半のため、デスクワークが得意、好きな人は向いています。
実際、PCスキルを磨きながら働けるので楽しいと思います。
経理がお勧めの人2|ロジカルかつ数字が得意な人
日々支払いの処理や入金の処理があったり、定期的(企業によって時期は異なります)に決算書の作成業務があったりと、経理と一口にいっても仕事の内容はさまざまです。
しかし、それらの一つ一つにロジックがあり、当然ですが全て数字が関わってきます。
ロジックだけでは頭でっかちになってしまいますが、最低限のロジックを理解できなければ、仕事を回すことができません。
数字で仕事をするだけに、一つ一つの数字の意味を理解しながら進める必要があるわけです。
実際、会計処理は「完璧な答えがない」場合も多いため、それがどういう意図に基づいているのかを考えて応用できるロジカルな人が向いていると言えます。
数字が得意なのは言わずもがなですね。毎日数字に触れるので最低条件です。
経理がお勧めの人3|家庭やプライベートを充実させたい
経理はルーチンワークが多く、スケジュールが決まっている業務がほとんどのため、数週間先、数ヶ月先の予定も把握しやすいです。
そのため、休暇の予定も組みやすいため、ワークライフバランスをしっかり確立させたい!という方にも向いています。
実際、私は祝日のある週に有給を取得して9連休をとって妻と温泉旅行に行く予定でいます。
次の長期連休は有給を使いつつ、妻と海外旅行に行き大型連休を楽しむ予定です。
●管理人
ありがとうございます。バリバリ収入を上げたい人はどうでしょうか? 経理に向いていますか?
年収相場は400-600万|未経験から経理に転職して高収入は難しい?
●Kさん
経理職の年収は400~600万が相場です。残業も多くないので、収入面では450万くらいですね。
実際の転職サイトを見ても経理職の収入は400~600万だと分かります。
※2019/3/9時点で実際に某転職サイトに掲載されていた求人情報です。
年収の幅が広く募集されていることが多いです。