仕事が増えてくると、「この仕事は、そろそろ他の人にやってもらいたい」と思うことがあります。しかし、なかなか人に受け渡すのはカンタンではありません。
それは、「もっと重要な仕事に集中したいけれど、受け渡すのが不安」というジレンマに陥るからです。その結果、「一から教えるくらいなら自分でやったほうがいい」と考え、自分で抱え込んでしまいます。
これを続けていると、人に仕事を渡せず、自分が苦しむことになります。そうなる前に、他の人に仕事を渡して、より質の高い仕事に取り組めるように策を講じる必要があります。
ここでは、仕事を引き継ぐ手段の一つである業務マニュアルについて、その目的や必要性を解説します。
目次
業務マニュアル(手順書)の目的や位置づけとは
基本的に、ある瞬間に一人の人間ができる仕事は一つだけです。つまり、あなたが仕事に集中しているとき、同時に後輩に仕事を教えることはできません。
そのため、後輩に質問されたら、あなたは仕事を中断するか仕事を続けるか選択しなくてはいけません。あなた自身の仕事を進めるか、後輩に仕事を教えるかはどちらかしかできないからです。
後輩に仕事を教える場合、あなたは自分の仕事を止める必要があります。心の中では、「自分の仕事があるのに・・・」と思いながら、その後輩に教えることになります。しかも、その後輩がモノ覚えが悪いと、イライラもたまります。
このように、後輩の仕事ばかり気にしていては、自分の仕事が進まなくなってしまいます。
それではどうすれば良いかと言うと、「あなたがいなくても仕事がまわる状況」を作り出せば良いのです。あなたが一人二役をこなせるように、業務マニュアルを作成するのです。
業務マニュアルの位置づけ|自分がいなくても仕事がまわる状況を作り出す
業務マニュアルとは、もう一人の自分を作り出し、誰かに仕事を教える代役のことです。
たとえば、私はエクセルマクロを教えることがあります。私が一度に相手ができるのはセミナーでもせいぜい10名程度です。しかし、ウェブサイトを使えば、一日で何千人もの人が閲覧してもらえます。
つまり、このサイトは、私がいなくても「私が教える状況」を作り出しているのです。実は、このウェブサイトも業務マニュアルと同じ役割をしているのです。
ウェブサイトの事例を出しましたが、あなたの会社でもすぐに実践できます。たとえば、「ワードで作成した手順書」や「動画マニュアル」を作って、会社の共有フォルダにアップすれば、誰でも同じマニュアルを何回でも閲覧することができます。
このように、一度マニュアルを作成すれば、保管場所さえわかれば、多くの人は勝手に仕事のやり方を学んでくれます。
今まで教えるのにかかっていた時間のコストを全て省けるだけでなく、一度で理解できなかった部分を繰り返し確認できるため、もの覚えの悪い人に何度も伝えるストレスを感じることがなくなります。
それでは、手順書を作成したあなたが何を行うかと言うと、ひたすら自分の仕事に専念します。他の人がマニュアルを見ても、どうしても分からない点だけを聞いてもらえるようにすれば、あなたは無駄な作業をしなくて済みます。
業務マニュアル(手順書)を作成して効果はあるのか?
一度マニュアル作ってしまえば、仕事を受け渡すことが可能です。後は、担当者にマニュアル通りに仕事をやってもらえば問題ありません。
たとえば、セミナーを開催するときの準備するモノをチェックリスト化して、アシスタントに渡しておきます。
□参加者の人数分の座席準備
□参加者のPCセッティング
□プロジェクターの設置
□配布物4枚/人
□参加者リスト出欠表(入金状況含む)
□道に迷った方がいた場合の電話対応
チェックリストがあれば、これらを一つ一つ確認するだけで仕事が終わります。つまり、セミナー開催者は、準備をアシスタントに任せて、他のことに集中できます。
しかし、このチェックリストがないとどうなるでしょうか。セミナー準備のアシスタントは、何をすればいいのかわかりません。そのため、セミナー開催者に「何をすればいいか?」と質問することになります。
セミナー開催者は、リハーサルなどで手一杯なのに、アシスタントのサポートをしないといけなくなります。これでは、セミナー開催者としてやるべき仕事に集中できません。
このように、チェックリストを準備しておくだけで、セミナー開催者は、準備を担当に任せて、本来やるべきことに集中できます。
使える業務マニュアルを作るコツを知らないと、効果のある手順書は作れない
しかし、こういったことができるのは、業務マニュアルを人に受け渡すことが可能なレベルで作成できることが条件です。
当然ですが、業務マニュアル作成にはそれなりの時間がかかります。また、業務マニュアルには正しい書き方があります。多くの人は、業務マニュアルの必要性を理解しても、正しい作成方法を知りません。
たとえば、正しい作成方法を知らない人は、以下のような悩みが必ず出てきます。
・どこからはその場の判断で動いて欲しいこととして、現場担当者の判断に任せれて良いのか?
・どこまで事細かに書くべきなのか?
・マニュアル作成にはどんなツールを使えば良いのか?
・手順書は、Wordで作ったほうが良いのか、Power Pointのほうが良いのか?
・エクセルは使うべきか、使わないべきか?
・どういうターゲットを想定して作れば良いのか
・複数の担当者が関わる仕事についてはどのように書けば良いのか?
・マニュアルを作ったはいいけれど、修正がメンドウ
もし、こういった悩みがあるなら、業務マニュアルを作成しても、受け渡せるレベルではありません。仮に、業務マニュアルが存在しても、担当者がスムーズに仕事を行うことができません。
その結果、手順書作成者は「マニュアル作成してもムダだ。自分でやるしかない」とあきらめてしまいます。最終的に、自分のやらないといけない仕事であふれて、自分が苦しむことになります。
つまり、業務マニュアルを作成して効果があるのは、書き方を知っている人だけであり、ただマニュアルを作成しさえすればいいワケではありません。
業務マニュアル(手順書)作成より自動化を目指すほうがイイこともある
業務マニュアル(手順書)を作成も大切ですが、仕事を自動化するほうがメリットが大きい場合があります。
なぜなら、業務マニュアルはあくまで人に仕事を渡すだけだからです。つまり、仕事量は変わりません。一方で、自動化すれば仕事量そのものを減らすことができます。
たとえば、売上の報告書を作成する場合、自動で報告書を作成するのはムズカシイことではありません。マクロを使えば、ボタン一つで報告書を作成できるように設定可能です。
動画で紹介しているのは、エクセルの元データから、複数の伝票を自動作成するサンプルです。エクセルマクロを使って、300件以上の取引データから、取引先ごとに伝票を作成します。
このようなルーティン業務の場合、業務マニュアルを作成するより自動化を目指すほうが効果があります。マクロについては、こちらの記事で紹介していますので、あわせて読んでみてください。
なんでも業務マニュアルを作成すればいいワケではありません。あくまで、自動化のメリットが低い仕事に関してマニュアルを作成することです。
昇給したり、ポジションが変わったりすると、どんどん仕事が増えていきます。このような状況になると、自分がなんとかしなくてはとなりがちです。もちろん、頑張ろうとする姿勢は重要です。
しかし、自分一人でできることは、そこまで多くはありません。そのため、業務マニュアルを作って「もうひとりの自分」を作りだすことで、仕事をどんどん受け渡せるようにしていくことが大切です。
こう考えると、一人で頑張るのではなく、業務マニュアルを作成する必要性が理解できるかと思います。
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