社会で働いている人であれば、働き方改革という名前は一度は耳にしたことがあるはずです。
言葉だけが広まっているわけではなく、実際に働き方改革を推進する企業や自治体は増えています。
私が勤務していた企業でも、フレックス制勤務やノー残業デーなどの働き方を変える取り組みが数多く行われてきました。
しかし、企業が働き方改革を進めても、そこで働く一人一人のスキルアップなしでは生産性向上はありません。
ここでは、働き方改革でほとんどフォーカスされない個人がやるべきことについて紹介していきます。
目次
そもそも働き方改革とは? その意味・目的やいつから始まったのか
働き方改革とは何ですか?言葉を聞いたとき、名前は一度は耳にしたことがあるはずです。
しかし働き方改革と言われても、その意味や開始時期を深く知らない人は多いです。
まずは働き方改革とは「何か?」や「いつから始まったのか?」についてお伝えしていきます。
働き方改革の意味や目的|労働力の確保
働き方改革を行う目的は簡単です。労働力の確保です。
なぜなら、人口が減少しているからです。
実際、日本の人口は現在約1億2000万人ですが、2050年頃には1億人を下回ると言われています。
人口が少なくなれば、当然労働人口も減っていきます。労働人口が減っていけば、国の税金が減ります。
そうすれば、インフラや教育などが回らなくなり、貧しい国になってしまうリスクがあります。
そこで、労働力を確保するために働き方改革を行うのです。
働き方改革が目指す3つの方針・狙い
労働力を確保するために、以下の3つの方針や狙いが考えられます。
No | 方針 | 対応策や狙い |
---|---|---|
1 | 働く人を増やす | 女性の雇用や高齢者の雇用を行い、国全体の生産性を上げる |
2 | 将来の働く人を増やす | 出生率の増加によって、将来の生産性を確保する |
3 | 生産性を上げる | ロボット導入などで、仕事効率化を図る |
これらの対策を通じて、労働力不足(現在から未来まで)を解消し、国力低下を防ぐための取り組むが「働き方改革」と言えます。
実際、働き方改革では非正規雇用者(パートや派遣労働者)の待遇改善や長時間労働の是正を目指しています。
これは、働きやすい労働環境を整備し、働く人を増やすのが狙いなのです。
働き方改革はいつから? 法律整備は?
働き方改革の狙いは、労働力不足の解消とお伝えしてきました。
実は、政府はこれを推進するために法律整備も行っています。
実際に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」は平成30年7月6日に公布されました。
この法律について厚生労働省のホームページを見ると、働き方改革について以下のように定義されています。
「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。
詳しくはこちらで読むことができます。
働き方改革の事例や取り組みは?
働き方改革の概要についてお伝えしてきました。
しかし、「働き方改革の具体的な施策について理解しているか?」と聞かれると、イメージが浮かばない人は多いはずです。
そこで、企業が取り組んでいる働き方改革の取り組みについて紹介していきます。
・過酷な労働環境の見直し
No | 取り組み | 期待される効果 |
---|---|---|
1 | フレックス制度 |
・人材の確保に有効 ・ワークライフバランスの促進 ・残業時間の削減と労働負担の軽減 |
2 | 多様な働き方に対応した評価制度導入 | 自分に合った働き方を目指すことができる |
3 | 仕事の見える化、情報共有の仕組みづくり |
・データ検索時間の削減 ・重複作業の防止 |
4 | 社外で業務ができる環境整備 |
・サテライトオフィス導入による通勤時間の短縮 ・テレワークによるワークライフバランスの向上 |
5 | 育児・介護休暇制度の導入 | 自分の状況に合わせて働くことができる |
6 | 時短制度の導入 | 自分の状況に合わせて働くことができる |
7 | 長時間労働の是正 | ・ノー残業デーの導入による無駄な作業の削減 |
8 | 会議の見直し (会議の目的を明確化、資料の事前送付 |
無駄な会議を減らせる |
9 | 有給休暇取得推進 |
・ワークライフバランス向上 ・計画的な業務遂行 |
企業の働き方改革で何が変わるのか? その影響は?
上記の通り、働き方改革を推進する企業は多いです。実際、私は大手企業に勤めていましたが、上記で紹介した施策のほとんどを行っていました。
しかし実際に私がサラリーマンとして働いていたときの感想は、「これらの施策によって大きく影響することはない」ということです。
なぜなら、働き方改革と言われたところで業務量は変わらないからです。
例えば、納期までに仕事が間に合わなければ残業対応が必要です。
当然ですが、「残業できないので納期を遅らせたいです」ということはありません。
企業として売上目標を達成する必要がありますし、製品を待っているお客さんもいます。
また突発の案件が入れば、休みでも現場に駆け付ける必要がありました。
さらに有給で休みやすくなったのですが、他の人が休んだときの対応も必要になることもありました。
そのため、業務が立て込んでいた時期は月何十時間も残業をしたり休日出社をしたりして対応していました。
忙しい人であれば、月60-80時間の残業をしていた人もいます。
私を含め多くの人は、働き方改革が現実の仕事が大きく変わらないと感じているはずです。
働き方改革で生まれる3つの課題
このように企業が働き方改革のための施策を打っても、特に大きく変わることはありません。
逆に働き方改革を進めることによる課題も生まれます。
特に以下の3つは多くの人が経験している課題です。
課題2|複数のITサービスで情報管理
課題3|一人一人の力量が求められる
以下で一つずつ解説します。
課題1|残業規制しても変化がない
ノー残業デーのように残業規制を行う企業は増えています。
労働基準法の影響もあり、企業によってはPCの電源オフの時間まで確認するところもあります。
例えば、私が勤務していた会社も週に2日はノー残業デイを導入し、定時に退社していました。
しかし当然ですが、このような残業規制を行うと、トータルの仕事時間が減ります。
この時、仕事の量を減らしたり期限を遅くしたりできるわけではありません。
つまり、これまでと同じ量の仕事を少ない時間で終わらす必要が生じます。
そのため、仕事が終わらなければ、どこかで穴埋めをしなくてはならなくなります。
実際、私が勤務していた企業でも残業規制をしていました。
ノー残業デーの日は定時で帰ることができましたが、それを補うために、ほかの勤務日で残業をしている人は多かったです。
私の部署では30-40時間/月に残業をしている人は少なくなかったのです。
このように、残業規制しても本質的な解決にはならないことは多いです。
課題2|複数のITサービスで情報管理
大企業に勤務していると、複数の部署がそれぞれの都合でITサービスを導入することがあります。
そのため、「部署Aに関する内容はシステムXで、部署Bに関する内容はシステムYで対応する」という事態が起こることがあります。
その結果、複数のITサービスで情報を入力することになり無駄な仕事が増えてしまうのです。
実際、私が勤務していた企業では、ある部署が社内の資料回覧システムXを効率化するためにシステムを導入しました。
その数年後に、他の部署が海外チームとのコミュニケーションのためにシステムYを導入しました。
当初のこの2つは目的が違っていてシステムを導入した効果がありそうに見えまました。
しかし、現実はシステムYは全く機能しなかったのです。
その理由は、システムYで入力する内容の多くがシステムXで入力する内容と重複していたためです。
残念だったのが、システムXとシステムYで情報を自動で行き来できるようにならなかったことです。
コストの都合上、カスタムして情報を共有する仕組みにできなかったのです。
結局、システムYは高いコストを入れて導入したのに、ほとんど使われませんでした。
このように複数のITシステムで情報管理をすると、無駄な作業が増えてしまいます。
ムダな作業を減らすために導入したシステムによって、ムダが増えてしまうことがあるのです。
課題3|一人一人の力量が求められる
働き方改革では、自分のライフスタイルに合わせて働くことを推奨してします。
例えば、フレックス、時短、テレワークといった働き方は、その人が働く時間を選択することが可能です。
しかし、これは自由を得る代わりに個人が仕事を確実に遂行する力が求められることを意味しています。
例えば、テレワークで仕事をすると、人に直接聞いて仕事を進めるのは難しくなります。
実際に私もテレワークの経験がありますが、一人で考え提案する実行力がない人には向きません。
またフレックスで働くと、全員が同じ時間帯で働くのも難しくなります。
つまり、誰かに何か聞きたいとき、質問してすぐに解決しにくいというデメリットがあるのです。
そうなると、自分で出来る部分は終わらせ、分からない部分を聞きにいくというスタイルで仕事をしなくてはなりません。
つまり働く人の力量が高くないと、自分で仕事を進めることができないのです。
このように、これは自由を得る代わりに個人が仕事を確実に遂行する力が求められることを意味しているのです。
生産性を高めるために個人ができる7つのこと
上述した通り、企業では生産性向上のために様々な施策を打っています。
しかし、すべての施策がうまくいくわけではありません。
なぜなら施策だけで機能しないからです。働く一人一人のレベルアップが要求されるのです。
例えば時短勤務では、同じ量の仕事を短い時間でこなす必要があります。
他にも新しいITサービスを導入すれば、その使い方を順応していく力が求められます。
このように、企業が行う働き方改革の施策は一人一人のレベルアップが必須なのです。
それでは、企業が進める働き方改革の生産性をさらに上げるためには、どのようなことを個人で行っていく必要性があるのでしょうか。
具体的には以下の7つがあります。
生産性アップ2|他社事例を活用する
生産性アップ3|会議の進め方を変える
生産性アップ4|仕事の段取りや全体最適化を行う
生産性アップ5|パソコンスキルを高める
生産性アップ6|手順書やフローチャートを作って仕事を仕組化する
生産性アップ7|作業を自動化する(マクロやRPA)
それでは以下で詳しく紹介していきます。
生産性アップ1|上司やチームと協力する
仕事の生産性アップのためには、仕事の進め方を考える必要があります。
特に不要な仕事をなくしたり、不得意な仕事をチームメンバーや外部業者に依頼したりするのは効率的な仕事には不可欠です。
なぜなら、人それぞれで強みが違うからです。
例えば仕事の全体感をつかむことが得意な人もいれば、専門分野の知識が豊富な人もいます。
しかしなんでも自分でやってしまうと、得意なことに専念できません。
そのため、得意な人であれば1時間で終わらせることができる作業を、数時間かけて終わらせるようなことになってしまいます。
そこで、抱えている仕事を得意な人にお願いできるように上司やチームに相談するのです。
このとき、人にお願いばかりするとすぐに相手から嫌われてしまいます。
大切なのはお互いの強みで助け合うことです。
実際、私はエクセルマクロVBAでチーム内の仕事を効率化する代わりに、チームメンバーに資料の確認作業をお願いしていました。
また仕事の効率化は得意だったので仕事の流れを見える化して、無駄な仕事をなくしていきました。
無駄な仕事の削減については、以下の記事で解説しています。
このように、上司やチームと協力しお互いの強みで助け合うのは大切なポイントです。
生産性アップ2|他社事例を活用する
仕事を効率化した経験が浅い人ほど、ゼロからアイデアを考えます。
しかし、経験豊富な人は、成功事例をもとに改善案を考えます。
すでにうまくいっている事例を利用したほうがラクに結果が出せるからです。
また、先人の事例を利用することはアイデアを考える時間が少なくてすむメリットもあります。
そのため、過去の事例や他社の取り組みを参考にすることは重要です。
以下の記事で事例を詳しく紹介しています。
ぜひ参考にして活用してみてください。
生産性アップ3|会議の進め方を変える
会議に参加した後に「時間のムダだった」と感じることも少なくありません。
例えば業務時間の大半がムダな会議に占有されてしまい、仕事が進まない管理職は多くいます。
このとき、無駄な会議になってしまうのは理由があります。それは会議の正しいやり方を知らないからです。
そのため、とりあえず会議を開催してしまい何も解決策を生まれずに1時間経ってしまうのです。
以下の記事で会議の正しい進め方をお伝えしています。
ぜひ参考にして活用してみてください。
生産性アップ4|仕事の段取りや全体最適化を行う
仕事では段どりやスケジュールを作成するのが重要です。
しかし、正しい仕事の進め方を知っている人は多くありません。
例えばプロジェクトを進めるとき、ToDoリストだけを作成する人がいます。しかし、これではタスク管理に失敗する可能性が高まります。
なぜなら、仕事はゴールから逆算して進める必要があるからです。ゴールから逆算しない段取りでは、納期遅れが生じるのです。
期日直前で余計な仕事をしたり後で必要な資料に気付いたりするのは、逆算していないことで起こる特徴です。
一方で、仕事の進め方を知っている人は、業務をスムーズにこなし納期遅れなしでこなします。
それは段取りを作成する方法を知っているからです。
逆にその方法を知らない人は、いつまで経っても納期ギリギリの仕事になってしまいます。
以下の記事で仕事の段取りや進め方をお伝えしています。
ぜひ参考にして活用してみてください。
生産性アップ5|パソコンスキルを高める
働き方改革において、パソコンスキルの向上は必須といえます。
なぜなら、新しく導入されるITサービスに順応したりテレワークで作業をしたりするには、高いパソコンスキルが必要だからです。
例えば、テレワークでオンライン通話機能を使って会社の会議に参加するとき、「オンライン通話のやり方がわからない」では仕事になりません。
また、企業では効率化のためのITシステムを数多く導入します。
実際、私が勤務していた企業では3年間で5つのシステムを導入しました。
そのためITに疎い社員は変化に対応できず、苦労していました。
そこで、そのようなパソコン仕事へのアレルギーをなくし、順応していくためのスキルを習得する必要があります。
以下の記事で詳しく紹介しています。
ぜひ合わせて読んでみて下さい。
生産性アップ6|手順書やフローチャートを作って仕事を仕組化する
仕事の仕組み化のための最もシンプルな方法は、「ミス防止のためにチェックシートを作成する」「作業手順書のマニュアルを作る」などがあります。
マニュアルやチェックリストは、「誰が取り組んでも同じ成果が出せる仕組み」として誰でも取り組むことができる方法の一つです。
実際、マニュアルやチェックリストがあれば、経験者が手とり足取り教える手間を省くことができます。
それだけではなく、担当者が産休や異動で仕事から抜けることになっても、誰かに引き継いでもらうのが容易になります。
具体的な作成方法については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ合わせて読んでみて下さい。
●業務マニュアル・手順書の作成方法
●業務マニュアル作成の目的とは?
●読まれる手順書を作るコツ
●業務チェックリストの作成のポイント
●フローチャート作成のポイント
生産性アップ7|作業を自動化する(マクロやRPA)
業務効率化ではその業務をなくすのが最も良い方法ですが、削減できない作業も少なくありません。
そのような場合に考えるのは、その作業の自動化です。自動化してしまえば、時間を取られることなく作業を終わらせることができます。
このとき、自動化ツール作成技術がエクセルマクロVBAです。
例えば、以下の請求書作成はマクロで自動化した事例です。
特に経理や事務で、請求書作成や売上データ作成などの仕事をエクセルで行っている場合、大幅に仕事を改善できることがあります。
以下は請求書を自動作成するマクロの動画です。
動画で紹介しているのは、エクセルの元データから、複数の伝票を自動作成するサンプルです。
エクセルマクロを使って、300件以上の取引データから、取引先ごとに伝票を作成します。
自動化のメリットは一度仕組みを作ってしまえば、それ以降は毎回自動で処理できる点です。
実際、請求書作成に月10時間かかっていたとしたら、年間120時間かかることになります。
それを自動化できれば、年間で120時間(5日)分を効率化できるのです。
最近はRPA(Robotic Process Automation)なども広まりつつあり、働き方改革では自動化はキーワードと言えます。
RPAはシステム導入が必要なため、どこの会社でも使えるというわけではありません。
しかし、マクロはエクセルを使える人であればすぐに始めることができます。
詳しくは以下の記事で紹介しています。
作業を自動化できれば、仕事の生産性はかなり上がります。
個人のスキルアップなくして働き方改革なし
ここまで、企業が行っている働き方改革についてお伝えしてきました。
しかし、働く人からすれば働き方改革に大きな期待を持てないのが正直な思いです。
実際、私が勤務していた企業でも残業規制を行いましたが、ほとんど変化がありませんでした。
しかしそれは当然のことです。なぜなら、企業や自治体が行う働き方改革は文化や風土を変えるものだからです。
つまり、働き方改革によって変えてもらうのではなく、私たち一人一人が「働き方改革を活用して仕事を変える」という意識をもたないと何も変わらないのです。
例えば受験勉強では、周囲から勉強できる環境を与えられても、その環境を活用して勉強をするのは受験生自身です。
そのため、働き方改革で時短できる職場環境になっても、その人が上手に活用できなければ何も変わらないのです。
そして、働き方改革を上手に活用するためには個人スキルの向上させるのが最もシンプルで強力な方法なのです。