仕事の流れを掴む上でフローチャート作成は役に立ちます。なぜなら、フローチャートがあれば仕事の全体が見える化できるからです。
フロー図を作成することで、初めて作業をする人でもスムーズに作業を行うことができるのです。
そのため、良い手順書や業務マニュアルには必ずといっていいほどフローチャートが記載されています。
しかし、フローチャートの書き方のポイントを押さえておかないとせっかくフローチャートがあっても理解できません。
そこで、フローチャートを作るときのポイントやコツを紹介します。
目次
フローチャート(フロー図)とは?
フローチャートとは仕事を見える化するための方法の一つです。フロー図の利点は、仕事の全体像や流れが見えるようになることです。
例えば、以下は自動販売機をメンテナンスするときのフローチャートです。
このフローチャートを見れば、自動販売機のメンテナンスには以下の3者が関わることが分かります。
・自動販売機
・メンテナンス業者
このように、フローチャートで作成しておくと仕事の流れがすぐに分かります。
そのおかげで、自動販売機を初めてメンテナンスする人でも、どのリスクがどのような場面であるかがすぐに分かります。
実際、分かりやすい手順書や業務マニュアルほどフローチャートが記載されています。
このとき、フローチャートの正しい作り方や書き方を知っておくと、さらに分かりやすいフロー図にすることができます。
そこで、フローチャートを作成手順を一つずつ5ステップでお伝えしていきます。
フローチャート(フロー図)を作成するときの考え方を5ステップ(手順)で紹介
それでは、業務マニュアル(手順書)の作成手順を紹介します。概要を説明すると、以下の通りです。
ステップ(手順) | 内容 |
手順1 | フローチャートを作成する目的を決める |
手順2 | フローチャートに関係する人を洗い出す |
手順3 | 関係する人のタスクを洗い出す |
手順4 | タスクを時系列で順番に並びかえる |
手順5 | フローチャートを作成し仮運用しながら改善していく |
それでは、以下で詳しく説明していきます。フローチャート作成について、自動販売機のメンテナンスフローを事例にして説明していきます。
作成手順1|フローチャートを作成する目的を決める
フローチャートを作成するときには、最初にどこまで書くかを決めることが重要になります。
なぜなら、最初に作成したいフローチャートの範囲を決めておくと、内容がブレにくくなるからです。
例えば、自動販売機のフローチャートを作成するとします。このとき、単純に自動販売のフローチャートを作成するだけでは、どこまで書けば分かりません。
そのため、作成途中で「あれも必要なのでは?」や「これも書いた方がいいのでは?」と新しい意見やアイデアが浮かんでしまいます。
そうすると、やり直しや追加作業がどんどん発生してしまうのです。
そこで、最初にフローチャートの作成範囲を決めておきます。そうすることで、作業のやり直しを防ぐことができるのです。
範囲として決めること
それでは、どのようにしてフローチャートの範囲を決めればいいのでしょうか。
範囲を決めるときは、どんな業務のフローチャートにするか意識することです。具体的には、以下のことを決めます。
・どのタイミングの業務か?|故障の確認
・なぜフローチャートを作成するのか?|入れ替わりが多い職種でも作業をスムーズに行えるようにする
このように範囲とは、「誰が読むか?」、「どのタイミングの業務か?」、「なぜフローチャートを作成するのか?」を決めることです。
ただ、大切なのは、範囲を広げすぎないことです。
たとえば、自動販売機のメンテナンスでいえば、メンテナンスだけではなく、メンテナンス後の報告方法も必要です。
しかし、範囲を広げすぎるといいことはありません。なぜなら、作成する量が膨大になってしまい、途中でフローチャート作成をやめたくなるからです。
まずは、一つのフローチャートを作ります。そして、一つ作り終えたら、次を作成していきます。
また、長いフローチャートを作成した結果、どこに何が書いてあるのかわからなってしまうこともあります。
そのため、まずは範囲を広げ過ぎずに書いていくのがコツです。
作成手順2|フローチャートに関係する人を洗い出す
業務マニュアル作成の第2ステップは、フローチャートに関係する人を洗い出すことです。人を洗い出すと、フローチャートの網羅性が上がります。
フローチャートとは、いってしまえば「舞台の台本」です。例えば、誰がどのタイミングで何をするのかを決めるものです。
このとき、登場人物が分かれば、だいたいの流れが見えてきます。逆に人が足りていない状態でフローチャート作成すると、作成途中で抜け漏れが多くなります。
先に誰が必要かを洗い出すと、網羅性の高い内容を書けるようになります。
実際、自動販売機のメンテナンスの場合であれば、以下の人が登場します。
2.自動販売機(人ではありませんが、登場人物の一つとしています)
3.メンテナンスする人
このように人を洗い出しておくと、どの後の作業がラクになります。
作成手順3|関係する人のタスクを洗い出す
人の洗い出しが終わったら、次は関係する人のタスクをそれぞれ洗い出します。
このとき順番を意識する必要はありません。とにかく必要だと思われる項目をどんどん出していきます。
コツは行動や動作を一つ一つに分解していくことです。
例えば、「ジュースを購入する」は間違っていないのですが、これはオススメしません。
なぜなら、「ジュースを購入する」は、多くの行動を含んでいるからです。実際、「商品を選択する」、「お金を投入する」、「購入ボタンを押す」を含んでいる表現です。
そのため、「ジュースを購入する」ではなく「商品を選択する」、「お金を投入する」、「購入ボタンを押す」に分解するのがコツです。
実際には、以下のようにタスクを洗い出していきます。
自動販売機で買い物をする人|購入ボタンを押す
●お金関係
自動販売機で買い物をする人|お金を投入する
自動販売機|おつりが出る
メンテナンス業者|お金を回収する
自動販売機で買い物をする人|お釣りを受け取る
メンテナンス業者|釣銭の補充をしておく
●商品関係
自動販売機で買い物をする人|商品を取りだす
自動販売機で買い物をする人|商品を選択する
自動販売機で買い物をする人|続けて商品を購入する
自動販売機|商品が出る
●ランプ
自動販売機|購入可能商品のボタンが光る
メンテナンス業者|ランプのチェックをする
作成手順4|タスクを時系列で順番に並びかえる
タスクをリストアップした後は、それらを並び替えます。ここでは、登場人物ごとに時系列で分けていきます。
具体的には以下のように並び替えます。
-商品を選択する
-お金を投入する
-購入ボタンを押す
-続けて商品を購入する
-商品を取りだす
-お釣りを受け取る
●自動販売機
-購入可能商品のボタンが光る
-商品が出る
-おつりが出る
●メンテナンス業者
-ランプのチェックをする
-お金を回収する
-釣銭の補充をしておく
作成手順5|フローチャートを作成し仮運用しながら改善していく
ここまで出来たらフローチャートを作成します。以下の図のようなフロー図にするのがお勧めです。
そして、作成したフローをもとに仕事を行います。もしかすると、カンペキには程遠いように思えるかもしれません。
しかし、それで構いません。この段階のものを活用して実務を回していきます。
その理由は、いきなりカンペキなものを作成することはできないからです。少なくとも2,3回運用して、カタチができるのです。
もちろん、完全なものを作成できればそれに越したことはありませんです。しかし、多くの場合、最初から完全なものを作ることはできません。
そのため、作成した未完成のものに改善することを念頭において仮運用を行います。そして、仮運用をしながら以下の2つを意識しておくことがコツです。
・「改善できないかもしれないな」と思うことも改善案とすること
・人からフィードバックをもらうこと
出せるアイデアは、すべて出して、後でやるやらないと決めるのがコツです。ここまでの手順をおさらいします。
ステップ(手順) | 内容 |
手順1 | フローチャートを作成する目的を決める |
手順2 | フローチャートに関係する人を洗い出す |
手順3 | 関係する人のタスクを洗い出す |
手順4 | タスクを時系列で順番に並びかえる |
手順5 | フローチャートを作成し仮運用しながら改善していく |
ここまでフローチャートの作成手順をお伝えしてきました。
ただ、上記でお伝えしたい以外で大切なポイントやコツがあります。
より分かりやすいフローチャートを作成するために必要なコツなので、以下で詳しくお伝えしていきます。
フローチャートの書き方のポイント3つ(+1)
フローチャートを作成するときにはポイントがあります。以下の3つ(+1)です。
ポイント2|助詞を入れない(文字数を減らす)
ポイント3|基本の記号を使う
ポイント追加|役割で分ける
それでは以下で詳しくみてきます。
ポイント1|フローは並列に書かない(時系列が分かるようにする)
フローチャートは仕事を見えるようにするのが目的です。そのため、直観的に分かりやすいフローにすることが大切です。
なぜなら、フローを時間をかけてじっくり読んでくれる人はいないからです。
例えば、多くの人はフローをチラッと見ただけで作業に取り掛かります。それだけではありません。特に初心者はフローが見づらいと、フローを読むことさえ嫌がります。結果的に、ミスが生じやすくなってしまうのです。
そのため、直観的に分かりやすく頭に入ってきやすいフローにするが重要です。
実際、以下のフロー図は上から下に時系列と共に流れ行くように書いています。その結果、非常に読みやすい作りになっています。
●良い事例
しかし、これが矢印が上に行ったり下にいったりしたらどうでしょうか。始まりと終わりがよく分かりづらくなってしまいます。
●悪い事例
このように直観的に分かりづらいフロー図は良いとは言えません。
そのため、フロー図は上から下に時系列と共に流れ行くのがポイントです。ここでは、上から下に書きましたが、左から右に書いても問題ないです。
要は時系列を意識して、直観的に分かるようにするのがコツです。
ポイント2|助詞を入れない(文字数を減らす)
助詞を入れないこともポイントです。これは、ポイント1と同じく直観的に見やすくするのが狙いです。
例えば、「確認する」といった文章にしてしまうと、文字が多く読みづらくなります。また、文字数が増えるとフローに書いているテキストボックスが大きくなってしまいます。
そうすると、読みづらい箇所に目がいってしまい全体を見てもらいづらくなります。
そのため、最低限理解できる文字数で書くことが大切です。具体的には、以下のことは意識するといいでしょう。
・お金を入れる→お金投入
・お金を回収する→お金回収
ポイント3|基本の記号を使う
フロー図で使う基本の記号があります。このとき、何も考えずに記号を使っていると疑問を持たれることがあります。
例えば、フローチャートに慣れている人は長方形とひし形を明確に使い分けます。
一般的に長方形はプロセス(タスク)で、ひし形は判断を伴う分岐として使用されます。
ただ、私は何も考えずに記号を使ってフローを作成していました。実際、全て長方形でフローを書いていたのです。
そして、他の企業の人と仕事をしていたとき、「なぜ長方形なのに判断を伴う分岐として使用されているのか?」と問われたことがあります。
このように、何も考えずに記号を使っていると疑問を持たれることがあります。
そのためよく使われる記号は、その記号が一般的にどのような意味で使われるかを理解しておくのが大切です。
しかし、他のサイトでは見ると覚えるべき基本記号を数多くあるように思えます。実際、中には20、30を超える数の記号を紹介しているところもあります。
ただ、覚えるのは基本の記号で十分です。具体的には以下の5つは使えるようになれば十分です。
上記の5つは覚えればいい理由は簡単です。実際に使うのは、上記の5種類だからです。使わないものを覚える意味がないのです。
逆に、使う記号の種類が増えるほど何を意味する記号か分かりづらくなります。実際、何十もの記号を理解している人はほとんどいません。
そのため、覚えるのは上記の基本記号で十分です。
ポイント追加|役割で分ける
以下の図のように役割を分けると、分かりやすいフローにすることが可能です。
なぜなら、フロー図を確認する人は何が知りたいかというと、「自分は何をする必要があるか?」だからです。
したがって、自分がどの役割で何をすればいいのかを一目みて分かるフロー図があると喜ばれます。
具体的には以下のような分けておくといいです。
●良い例
●悪い例
ポイントは、役割を線で区切っておくことです。そうすることで、「誰が」、「いつ」、「何を」するのかが分かりやすくなります。
まとめると、分かりやすいフローチャートにするためのコツは以下の3つ(+1)です。
ポイント2|助詞を入れない(文字数を減らす)
ポイント3|基本の記号を使う
ポイント追加|役割で分ける
ぜひ、意識しながらフロー図を作成してみてください。
エクセルでフローチャートを書くなら、こちらの記事からダウンロードできます
もしフローチャートを実際に書きたいのであれば、以下の記事で解説しています。
ぜひこちらを読んでみてください。エクセルでフローチャートを作成する方法から使い方まで詳しく紹介しています。
上記の記事で紹介しているエクセルのフローチャートの使い方は以下の動画で説明しています。
ぜひご覧ください。
仕事を自動化できればフローチャートは要らない
ここまで、フロー図の書き方のポイントについて記載してきました。しかし、フロー図を作っても確実に仕事がやりやすくなるわけではありません。
なぜなら、フローチャートは人にわかりやすく説明するためのものに過ぎないからです。説明が必要な仕事をしている限り、人為ミスはどうしても発生してしまいます。
たとえば、月末処理で何百、何千といったデータを処理する仕事があります。このような仕事は、フローチャートで仕事の流れがあったとしても必ずミスが生じます。
このとき、ダブルチェックをしたり確認部署をフロー図に入れることで対策を講じる会社があります。
しかし、ダブルチェックや確認部署をフロー図で明確化したところで、ミスは減るでしょうか。おそらくなくならないでしょう。
フローは視覚的には分かりやすいですが、作業する人の負担を減らしてくれるわけではないのです。
そのため、フロー図があっても、人為的ミスがゼロになることはありません。
そこで、人為的なミスがなくならない場合はエクセルマクロのような自動化ツールを活用して、人の作業そのものを減らすことを検討することをお勧めします。
エクセルマクロについては、こちらの記事で解説していますので、あわせて読んでみてください。
●エクセルマクロで「できること」とは?
●エクセルマクロとは? メリットや利点を解説
●エクセルマクロのサンプルファイルを無料ダウンロード
フローチャートに加えて、業務手順書も作成してみよう
フローチャートは、仕事全体の概要を図にしたものです。
しかし、仕事全体で引き継ぐことを考えるなら、手順書や業務マニュアルを作成しておくことをお勧めします。
そうすれば、仕事の引き継ぎが簡単になります。以下の記事で説明していますので、合わせて読んでみてください。
●業務マニュアル・手順書の作成方法
●業務マニュアル作成の目的とは?
●読まれる手順書を作るコツ
●業務チェックリストの作成のポイント
仕事のスピードをあげたいなら、パソコンスキルを高める
フロー図の作成方法を紹介しましたが、フロー図を作成するときパソコンスキルが高いと作成速度を上げることができます。
そのため、パソコンスキルを高めておくと仕事をスムーズに進めることができるようになります。
もし、パソコンスキルについてコツやポイントを知りたいなら以下の記事もお勧めです。
●パソコン操作が早くなる20のコツ
●パソコンスキルを学ぶなら何か学ぶ? 習得方法や学習方法を解説
●求人欄のパソコンスキルはどのレベルか?
●タイピングを早くするためのコツ
●タイピングができるようになった人のビフォーアフターとは
仕事を効率化したいなら、業務効率化のスキルを磨こう
業務のフロー図の作成方法を紹介しましたが、フロー図作成の目的は仕事を早く行うことにあります。
そのため、フロー図作成以外の仕事の効率化スキルを学んでおくと、さらに仕事をスムーズにこなせるようになります。
もし、仕事を早く行うためのコツやポイントを知りたいなら以下の記事もお勧めです。
●多くの企業で採用されている業務効率化の事例
●仕事のムダの見つけ方
●業務効率化のテクニックやアイデアの出し方
●単純作業やルーティン業務から抜け出したい人のための仕事の仕組み化の方法
●仕事の失敗を防ぐためのリスクマネジメントのポイント
●納期遅れをなくすための仕事の段取りテクニック
●仕事ができる人の議事録の作り方とは? 書き方のコツを紹介
●マウスを使わないでPC操作を行うためのテクニック集
業務手順書を一緒にフローチャートを書こう
ここで紹介した3つのポイントを意識すれば、見やすいフロー図を作成できます。
しかし、これらのポイントを知っているだけでは分かりやすいフローチャートを書けるようにはなりません。
なぜなら、実際に周囲の人に使ってもらって初めて、分かりやすいものを作れているかどうか分かるからです。
例えば、野球の試合を見ただけでホームランを打てるようになることはありません。実際にバットを振って、三振を経験しながら少しずつホームランが打てるようになっていきます。
これはフローチャート作成も同じです。ここで紹介したポイントを意識して「どうすればもっと良くなるか」を考えて実践することが大切です。
ぜひ、この記事を読んだあなたがフローチャートを作成して、スムーズに仕事をこなせるようになってほしいと思います。